第80記 千秋庵(東尾久三丁目)

とんかつ

脱サラしてからというもの、たまに昼酒と旨い飯を求めて都内を放浪することに贅沢を感じる。
今回は荒川区・東尾久三丁目にある蕎麦屋「千秋庵」に初訪問。

都電荒川線の東尾久三丁目駅から徒歩10分ほど、住宅街の一角にひっそりと佇む店構え。
知らなければ通り過ぎてしまいそうな外観だが、カツ丼好きの間では密かに話題の名店。

平日の昼下がり、開店直後にも関わらずすでに満席。並びながらメニューを眺めると、目を惹くのは「イベリコ豚かつ丼」。蕎麦屋でイベリコ豚とは、ただならぬこだわりを感じる。

店内はカウンターなしのテーブル席と小上がり。4人掛けが4卓のみ、相席なしのスタイル。ソロ客が多く、静かな空気が心地よい。

まずは喉を潤すべく、ビール中瓶(650円)を注文。キンキンに冷えた瓶ビールが昼の贅沢。お通しは大根サラダ。濃いめの味付けがビールを進ませる。シャキシャキの食感に、甘辛いドレッシングが絡む。蕎麦屋らしい和風の一品。


そしてお待ちかね、イベリコ豚かつ丼(1,400円)が着丼。

見た目からして豪快。丼の上には、厚みのあるイベリコ豚のカツが鎮座。衣はサクサク、肉はジューシー。スペイン産のイベリコ豚。脂身は甘く、赤身はしっかりとした歯ごたえ。噛むほどに旨味が広がる。
卵はふわとろ仕上げ。さらに中央には名古屋コーチンの卵黄が輝く。濃厚な黄身がカツと絡み、味に深みを加える。
割り下は蕎麦屋らしい出汁の効いた甘辛仕立て。つゆは控えめながら、しっかりとご飯に染みている。米の炊き加減も絶妙で、粒立ちが良く、つゆとの相性抜群。

箸休めには味噌汁と漬物。味噌汁は優しい出汁の香り、大根がほっこりとした味わい。漬物は白菜の浅漬けと大根のべったら漬け。甘味と塩味のバランスが良く、カツ丼の合間にちょうどいい。

この一杯、ただのカツ丼ではない。素材の良さ、火入れの技術、出汁のバランス。すべてが高次元で融合した逸品。蕎麦屋の枠を超えた、カツ丼の完成形。
ちなみに、他にも「猪豚かつ丼」や「厚岸産かきせいろ」「イベリコ豚シチュー」など、魅力的なメニューが並ぶ。
蕎麦も評判で、冷たいもりそばはキンキンに冷えていて、主役級の旨さとのこと。次回は蕎麦とのセットを狙いたい。
アクセスはやや不便だが、それでも通いたくなる実力店。昼酒と絶品丼を求めて、また一軒、放浪記に刻まれた名店。

千秋庵 (東尾久三丁目/そば)
★★★☆☆3.50 ■予算(夜):¥1,000~¥1,999

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